日韓軍事情報協定とは何?そのメリット・問題点と締結の背景


最近のテレビのワイドショーやネットニュースでは、レームダックと化した韓国の朴槿恵大統領のネタであふれています。

日本とは直接的に関係しない問題であるせいか、個人的にはあまり興味が無かったのですが、今日のニュースで、日本に影響が大きそうな韓国関連のネタが出てきました。

それが、日本と韓国の間で軍事情報協定を締結するよ!というニュースです。

正確には「日韓軍事情報包括保護協定」とか「日韓秘密情報保護協定」などと呼ばれる協定だそうですが、ニュース記事を読むと色々と疑問や不安が出てきます。

例えば、

  • なんで反日の韓国と軍事協定結ばなくちゃいけないの?
  • 日本の軍事機密を韓国に渡さないといけないの?
  • なんでこのタイミングで締結するの?
  • 日本になんかメリットあるの?
  • 韓国の国民は協定締結に反対しないの?

といった疑問やツッコミです。

この記事では、この日韓軍事情報協定についてまとめてみたいと思います。

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日韓軍事情報協定のニュースの概要

まず、今回の日韓軍事情報協定についてのニュースから一部引用します。↓

韓国政府は22日の閣議で、日韓の安保分野の情報共有を可能にする軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結を承認した。

(中略)

朴(パク)槿(ク)恵(ネ)大統領の裁可を経た上で、23日にも日本との間で協定文書に署名する。

あんまりニュースで騒がれていませんでしたが、11月14日(月)には協定の仮署名が既にされていたそうです。

韓国側が土壇場でちゃぶ台を返さなければ、明日23日にも協定締結となります。

軍事情報包括保護協定:GSOMIAって何?

ネットニュースのコメント欄を見ると、協定締結に否定的な意見が多いようです。

論調としては、なんで日本を「敵視している」韓国と軍事情報を共有しないといけないんだ!という感じです。

私もなんとなくそんな感想を持ってしまいましたが、軍事情報包括保護協定とは何か?について知ると、「締結してもいいんじゃないですかね?」のようにテンションが若干冷めました

ここで軍事情報包括保護協定の定義について、Wikipediaから一部引用します。↓

軍事情報に関する包括的保全協定(ぐんじじょうほうにかんするほうかつてきほぜんきょうてい、英語:General Security of Military Information Agreement、GSOMIA、ジーソミア)は、同盟など親しい関係にある2国あるいは複数国間で秘密軍事情報を提供し合う際、第三国への漏洩を防ぐために結ぶ協定。

日本はアメリカ合衆国やNATO、フランスと、アメリカ合衆国は60カ国以上とこの協定を締結している。

上の赤字の部分にもありますように、日本は同盟国であるアメリカ、西側諸国と軍事情報包括保護協定を既に結んでいますし、アメリカに至っては60カ国以上の国とこの協定を結んでいるそうです。

また、韓国は現時点で32カ国と軍事情報協定を締結済みで、新たに締結を提案している国は11カ国あるそうです。※1

つまり、GSOMIAは日本と韓国の間だけで結ぶ「特殊な」協定などではなく、全世界の国々で結ばれている結構「ありふれた」協定だと言って良いと思います。

軍事情報協定を結んだら機密情報を提供しないとダメ?

GSOMIAの目的は、軍事的な機密情報を共有する場合に第三国に漏洩しないようにすることであって、機密情報を全て共有することを求めるものではありません。

なので、日本の軍事機密が韓国に全て提供されるということはないですし、その逆もありません。

あくまでも、日本政府(韓国政府)が必要と認めた場合にのみ機密情報を相手国に提供するということです。

この点については、既に日本とアメリカの間で結ばれている軍事情報包括保護協定の条文が参考になります。↓

日韓軍事情報協定の意義・メリット

日韓に限らず、軍事情報包括保護協定を結ぶことのメリットとしては、相手国に機密情報を「安心して」提供出来るようになるということが挙げられます(本当に安心なのかは別として・・・)。

例えば、日本が提供した北朝鮮に関する軍事機密情報を、韓国が第三国である中国に勝手に流していたとします。

このケースでは、軍事情報協定が締結してない場合、韓国 「ごめん、情報漏えいした。ミスった。わざとじゃないから。」日本 「遺憾の意!!」という感じの対応しか出来ないと思われます。

一方、軍事情報協定を結んでいる場合、「遺憾の意」キャノンを発射するだけではなく、韓国側に対して原因究明や対応策を強く求めることが出来ると考えられます(日米間の軍事情報協定の第十七条「紛失又は漏せつ」参照)。

情報を漏えいした場合に「ごめんじゃ済まない」という状況なら、軍事機密を共有がしやすくなる

簡単に言えば軍事情報包括保護協定の趣旨はこんな感じで間違っていないはずです。

日本側のメリット・韓国側のメリット

では、具体的に、日韓軍事情報協定が締結されると日本と韓国にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

まず、日本としては北朝鮮のミサイル・核実験などの情報が韓国からスムーズに入ってくるようになります。

情報収集能力の高い・低いは置いておいて、やはり北朝鮮のお隣に位置する韓国が最も北朝鮮の情報を集めやすいですから、日本としてはその情報を円滑に得ることが出来れば助かります。

これが日本側のメリットです。

韓国側のメリットとしては、日本の海上哨戒機や偵察衛星情報収集衛星が集めた情報を入手しやすくなる(?)という点が挙げられます。

こういった素人目にも分かりやすい利点だけでなく、他にもメリットや旨味というのはあるんだと思います。

さて、このようなメリットが双方にあるにも関わらず、どうしてこれまで日韓軍事情報協定は締結されてこなかったのでしょうか?

日本と韓国は親しい国?

上で引用しましたWikipediaの文章の中に、同盟など親しい関係にある2国あるいは複数国間で秘密軍事情報を提供し合うという部分があります。

日本とアメリカは同盟関係にありますが、日本と韓国は同盟関係にはありません。

ですから、軍事情報協定を結ぶのであれば、その理由は「親しい国だから」というモノになるはずです。

では、日本と韓国は「親しい国」なのでしょうか?

よその国から客観的に見れば、日本と韓国はともにアメリカの同盟国であって西側諸国の一員ですから、「親しい国」と映るのかもしれません。

しかし実際には、日本にも韓国にも相手に対する不信感が根強く残っています。

この不信感が、これまで日韓で軍事情報協定が結ばれてこなかった原因だと言われています。

2012年には韓国側が協定締結をドタキャン

2012年には軍事情報協定が締結目前まで進んだのに、韓国側が締結予定時刻の1時間前になってドタキャンしてしまいました。

これは、韓国政府が日韓軍事情報協定の存在を国民に対して直前まで隠していたところ、それがバレて激しい反対運動が巻き起こったからです。

そして、後味の悪いことに、韓国側は締結延期の理由を「日本側の慰安婦記念碑撤去運動のせいだ」としています。※2

韓国国民の反応はやっぱり・・・

では、2012年の「ドタキャン」から4年経った今、韓国国民の意識は変わったのでしょうか?

韓国メディアが行った日韓軍事情報協定に対する世論調査では、

  • 締結に反対:59%
  • 締結に賛成:31%

という結果が出ています。※3

また、韓国の野党も協定締結に猛反対していて、「韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結協議中断決議案」が国会に提出されるレベルです。

これらの情報を見ると、韓国側の反対は強いんだなぁ、と感じてしまいます。

論理的に考えれば、日韓軍事情報協定の締結はメリットの方が大きいですし、韓国はすでに日本以外の国と同様の協定を結んでいますから、締結するのが合理的な選択であるはずです。

国民の世論や野党が反対するのは、「協定の相手が日本だから」という理由。つまり日本に対する国民感情の存在が大きいのだと思います。

韓国国内には冷静な意見もある

もちろん、韓国メディアの中にも「合理的な判断をしましょう」的な冷静な論調もあります。

↓の中央日報の社説などは、この記事で私が書いていることをもっと分かりやすくコンパクトにまとめています。

拙速という主張も正しくない。すでに1989年から韓国側の提案として話し合われてきたためだ。「第2の乙巳勒約」云々は論じる価値もない。(乙巳勒約は、大韓帝国が事実上の被保護国になった第二次日韓協約のこと。)

韓国はすでにロシアなど32カ国と協定を締結し、中国など11カ国に締結を提案している状態だ。それでも日本との協定はダメだというのは根拠のない反日感情に基づくただの論理の飛躍だ。

協定は反対にわれわれにとってますます切実なものになっている。北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)が現実的な危険となって迫っているが、韓国は北潜水艦を探知する能力がまだ不十分な故だ。

反面、日本は韓国に16機しかない海上哨戒機を77機も有し、情報収集衛星5機、早期警戒機17機に探知距離1000キロ以上の地上レーダー4基を保有している。

ヒューミント(人的情報収集活動)も、過去の政府でネットワークが崩壊していることから現在はむしろ韓国より日本のほうが正確だという分析まである。

朴槿恵大統領の退陣要求で燃え上がっている韓国国民が、このような冷静な主張に耳を貸せるのかどうかは微妙ですが。

協定締結は、なぜ「今」なのか?

では、このような韓国国民の反対を押し切ってまで、なぜ韓国政府は日本との軍事情報協定を結ぶのでしょうか?

なぜこのタイミングなのでしょうか?

この理由としては、

  • パククネ大統領不祥事による混乱を利用
  • 北朝鮮の軍事的脅威が増大したこと
  • 韓国・アメリカ大統領の交代前

という3つがあるのでは?と考えます。

韓国政府が退陣デモの混乱に乗じた?

パククネ大統領の退陣を求めるデモは100万人規模とも言われていて、かなり盛り上がっているようです。↓

動画の様子を見る限り、平時に比べれば日韓軍事情報協定に対する反発は弱いことは事実だと思います。

実際、韓国野党は、「パククネ大統領の不祥事騒動による混乱を利用して、どさくさに紛れて協定を結ぼうとしている!」と批判しています。

このタイミングでの協定締結がパククネ大統領の判断によるものなのか?は、個人的にかなり疑問です。

大統領にはそこまで気を回す余裕は無さそうなので、クレバーな官僚が事を進めたのでは?と考えたくなります。

北朝鮮のSLBM発射実験成功の影響

今年2016年8月に、北朝鮮はSLBMと呼ばれる潜水艦から発射するタイプの弾道ミサイルの発射実験に成功しました。

これまで、北朝鮮は日本近海に頻繁にミサイルを打ち込んできましたから、「はいはい、またねー。構ってほしいのかな??」くらいのテンションでニュースを見ていたのですが、SLBMの発射実験成功は実はかなり重大な意味を持つものであって、決して軽視できないそうです。

具体的には、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の保有によって、北朝鮮の核抑止力が格段に強まったと指摘されています。

北朝鮮がSLBMを持っていなかった今までは、アメリカが北朝鮮の核関連軍事施設を全て破壊すれば、北朝鮮は核兵器で反撃することが出来ませんでした。

しかし、地上ではなく海中に潜んでいる潜水艦に核ミサイルを隠し持っていた場合、地上が壊滅状態になってもSLBMによって反撃することが可能になります。

仮に北朝鮮がSLBMを運用できるようになったとすれば、アメリカは北朝鮮に下手に手を出せなくなります。

つまり、北朝鮮の核抑止力の増大です。

このような状況の変化によって、北朝鮮がさらに軍事的挑発をエスカレートさせるリスクが考えられます。

ただ、実際のSLBMの運用には、弾道ミサイル発射に耐えうる潜水艦を用意する必要がありますが、北朝鮮はまだ保有していないと言われています。

なので、現時点ではまだ危険はそこまで大きくないと考えられています。

しかし、北朝鮮のSLBM発射成功は、アメリカの対北朝鮮政策を見直すキッカケになるくらいのサプライズだったと思われます。

ですから、アメリカとしては「北朝鮮、これまでちょっと放置気味だったけど、そろそろしっかり監視しなきゃね。」「ということで、日本と韓国、お前らそろそろいい加減に情報共有ちゃんとしてね(怒」

という感じで、日韓両国に軍事情報協定締結を働きかけたのかもしれません。

最後の方は妄想に過ぎませんが、北朝鮮のリスクが増大しているのは事実ですから、あながち的外れではないのではと考えます。

大統領交代の前に済ませておきたい

韓国も日本と同様、実際の政治を動かす際には、官僚の存在が大きいはずです。

国益を冷静に考える官僚としては、安全保障のためにも日韓軍事情報協定は結んでおきたい。でも、韓国の大統領はもうすぐ交代するし、アメリカの大統領も来年1月に交代してしまう。次の大統領がどんな方針を打ち出すか分からないし、話を振り出しに戻されても困るから、今のうちに結んじゃおう。

的な考えで、話を進めたのかもしれません。

これは私の勝手な妄想です。はい。

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まとめ

以上、日韓軍事情報協定の意味・メリット・問題点などをまとめてみました。

日本側の大きなデメリットは無さそうなので、個人的には特に問題に感じません。

当たり障りのないつまらない結論で恐縮ですが、日韓できちんと情報共有をして北朝鮮のリスクを低減して欲しいものです。

余談ですが、日米間の軍事情報包括保護協定には有効期限はなく、毎年自動で更新されています。万一、協定を破棄したい場合には事前に通告すればOK、というふうになっています。

日韓の協定も同様であれば、日韓関係が悪化した場合、どちらかの都合で破棄されるという事態も考えられます。

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