シャープが資本金を1億円に減資する理由・狙いとは?

シャープリストラ

経営難にもがくシャープが、上場企業としては異例の奇策を打ち出しました。

それは、

1,218億円の資本金を減少させ、1億円に減資する

というものです。

え?上場企業の資本金が1億円になるの?

という驚きを持った方が多いのではないでしょうか。

Yahoo!ニュースのコメント欄には、

99%減資とは!まさに目のつけどころがシャープですね!

などという、痛烈な皮肉も登場しています。

(上記画像引用元:”Sharp Head Office” by Otsu4投稿者自身による作品. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via ウィキメディア・コモンズ.)

それにしても、

大企業かつ上場企業であるシャープが、資本金を1億円なんかにして大丈夫なの??

と疑問に思う方も多いはず。

そこで、今回のシャープの資本金減少について、その理由と狙い、関連する会社法の規定について分かりやすく解説行きたいと思います。


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シャープの1億円への減資の目的・狙いとは?

シャープの資本金減少(減資)の目的・理由について見ていく前に、

最近のシャープの業績について整理してみます。

シャープの近年の業績と利益剰余金の推移

 2011年2012年2013年2014年
売上高2兆…†7,559億円3兆…†219億円2兆…†4,785億円2兆…†9,271億円
当期純利益194億円▲3,760億円▲5,453億円115億円
利益剰余金6,489億円2,599億円▲2,909億円1,350億円
自己資本比率35.6%23.9%6.0%8.9%
従業員数55,580人56,756人50,647人50,253人

上の表をご覧になれば分かりますように、シャープは2012年3月期と2013年3月期に合計で約9,213億円の純損失を計上しています。

その結果、2013年3月期の決算では、利益剰余金がマイナス2,909億円になっています。

シャープが公表する2015年3月期の業績予想は、純損失約300億円を計上する見通しですし、専門家の予想では2016年3月期の決算はさらに大幅な赤字(約1,000億円)を計上する見込と言われています。

利益剰余金とは?
利益剰余金とは、簡潔に言えば、企業が設立後に蓄えた利益のことで、「累積利益」とか「累積黒字」などということもあります。
利益剰余金がマイナスの値になった場合、「累積損失」「累積赤字」と呼ばれます。

株主に支払われる配当金は、原則としてこの利益剰余金を原資としていますから、利益剰余金が無いと株主に配当金を支払うことが困難となります。
また、利益剰余金がマイナスのことを「欠損」といい、欠損の状態はかなり「カッコ悪い」状態と見られます。

ですから、このページで後述するように、企業は資本剰余金や資本金から利益剰余金に振り替えて、欠損を補填することがあります。

 

上に載せた表を注意深く見ると、2013年3月期には▲2,909億円だった利益剰余金は、2014年3月期には1,350億円に戻っています。

しかし、2014年3月期の純利益は115億円です。

計算が合いません。

これは、2014年3月期に、資本金・資本剰余金から利益剰余金に金額を振り替えているからです。

具体的には、次のような流れで利益剰余金を増やしています。

  • 資本金から資本剰余金に約1,623億円を振り替える。
  • 資本剰余金から利益剰余金に約4,144億円を振り替える。

つまり、2014年3月期にシャープの利益剰余金が大幅に増えたのは、純利益が大きかったからではなく、資本金・資本剰余金から利益剰余金に振り替えていたから、と言うことができます。

ここで、気になるのが、

資本金や資本剰余金を勝手に利益剰余金に振り替えていいの?

ということ。

そこで次に、資本金とは?について見ていくことにします。


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資本金は債権者保護のためにある

資本金の一般的なイメージは

会社設立時に出資した金額

というものだと思われます。

これはこれで間違いではないのですが、資本金にはもう1つ重要な意味があります。

それは、「債権者保護」という目的です。

資本金とは、次のように定義・説明されています。

資本金は、会社財産確保のために設定される計算上の数額であって、現実の会社財産とは異なる。会社財産が常に変動するのに対し、資本金の額は、法律(会社法)の規定に基づいて算出されるため、現実の会社財産と連動して増減することはない。(参照元:Wikipedia)

非常に分かりにくいので、もう少し噛み砕いてご説明します。

資本金の額は、基本的には株主からの出資の額と考えてOKです(実際にはその半額というケースもあります)。

ここで例え話をしてみます。

Aさんが他の株主と共同で1,000万円を用意して株式会社X(X社)を設立したとします。

この場合、X社の資本金の額は1,000万円となります。

次に、設立間もないX社は、商品の仕入のため、Y社に

100万円分の商品を、掛けで売ってください

と掛け合ったとします。

Y社としては、現金でなく掛け(商品の引渡し後、あとで代金を回収すること)で売ることに対して、警戒します。

X社は、まだ設立間もなく、取引実績も評判も不明で、きちんと代金を支払ってくれるか分からないからです。

その際にY社が判断基準にするのが、資本金の額です。

X社の資本金は1,000万円ですし、設立間もないのですから、Y社は

資本金は1,000万円だし、100万円位なら大丈夫かな?

と考えて、商品をX社に売ることとしました。

このように、資本金の額は、債権者や取引先にとって、その企業の信用力を測る重要な指標ということができます。

ただ、資本金の額が1,000万円であるからといって、実際にその会社に1,000万円の現金預金が存在するとは限りません。

設立当初から、赤字続きで、現金が数万円しかない!というケースも考えられます。

話をX社・Y社の例え話に戻します。

Y社は、X社との初回取引の後、継続的に取引することにして、何回か取引を繰り返しました。

しかし、ある日、X社の社長Aさんから

「申し訳ありません。お金がありません。代金払えません。」

と言われ、売掛金の回収ができなくなってしまいました。

ただでは引き下がれないので、Y社はAさんにお金が無くなった理由について聞きました。

すると、Aさんは

「お金は550万円しかないんですが、当期末の決算で、500万円ほど株主に配当金を支払ったんですよ。」

と言いました。

Y社としては、びっくりすると同時に、怒りますよね。

配当金払う前に、掛けの代金を払えや!!

と。

このように、会社が自由に配当金を支払うことが出来るようになってしまうと、債権者は会社に対する債権の回収ができなくなってしまいます。

そのため、会社法では、

会社財産の額が資本金の額を下回る場合、配当をしてはならない

と定めています(実際にはもう少し複雑な規定ですが、イメージとしては合ってます)。

この規定に従えば、先のX社の場合、資本金の1,000万円に対して会社財産は550万円しかなく、会社財産が資本金の額を下回るため、株主に配当金を支払うことは法律で禁じられることになります。

その結果、

配当金支払っちゃったんで、お金ないから、代金払えないっす!ごめんっす!

というような、債権者にとってふざけた事態にはならないわけです。

 

このように、資本金の額には、「出資の額」という意味以外にも、

債権者を保護する

という意味・目的もあるわけです。

 

すると、「お金はないけど、配当金を株主に支払いたい!」という経営者は、こう考えます。

資本金の額、減らせばよくね?

と。

資本金の額の減額を自由にさせてしまっては、債権者保護の目的は達成されません。

ですから実際には、会社法は資本金の額の減額(減資)には、厳しい制限を定めており、資本金の減額は、株主総会決議のほか、債権者保護手続等の手順を踏まないと行えないようになっています。

 

・・・と、ここまで資本金の意味・意義について見てきましたが、

話をシャープの資本金減額に戻します。

シャープの資本金減額の目的は?

今回、資本金の額を1億円にすると発表したシャープですが、前述した通り、2014年3月期にも

資本金→資本剰余金→利益剰余金

という金額の振替をしています。

その際の目的は、マイナスとなった利益剰余金をプラスにすることでした(いわゆる欠損填補)。

では、今回、シャープが再び資本金を減額して1億円にする目的は何なのでしょうか?

その目的とは、

  • マイナスとなる利益剰余金をプラスにするため(欠損填補)
  • 資本金を1億円にして「中小企業」となり、税制上の優遇措置を受けるため

の2つと言われています。

シャープは、2015年3月期には▲300億円、2016年3月期には▲1,000億円の損失を計上する見通しで、再び利益剰余金がマイナスになってしまう見込です。

利益剰余金がマイナスのままでは、何かと都合がわるいので、プラスにしたい。

そのためには、資本金から利益剰余金に振り替えるしかない。

という理屈・理由で、資本金を減額するわけです。

2015年12月末時点の四半期報告書を参照すると、シャープの利益剰余金は約1,278億円ですから、2015年・2016年度の純損失で、また利益剰余金がマイナスになってしまいます。

そのため、資本金を予め利益剰余金に振り替えておく、いうことだと考えられます。

 

利益剰余金がマイナスの状況では、株主への配当は行えません。

その結果、株価もさらに低迷してしまいます。

株価が低迷すれば、今後、証券市場で公募増資をする際に集められる資金の額が減少してしまいます。

「利益剰余金がマイナスだと何かと都合が悪い」というのは、こういう意味です。

 

また、どうせ資本金を大幅に減少させるなら、1億円以下にして、税制上の「中小企業」になってしまえば、中小企業向けの様々な優遇措置を受ける事ができます。

ですから、1億円まで減資したのですね。

ただ、税制上の中小企業になるということは、あくまでもサブ的な目的で、メインの目的は利益剰余金の増額だと考えられます。

シャープ減資の見通しと今後のスケジュール

資本金とは?についてご説明したところで、お話したように、資本金の減額には、債権者の保護手続きが必要になります。

具体的には、

債権者の皆さん、我が社は資本金を減額しますが、文句ある人いますか~??

と債権者に呼びかけます。これを債権者異議申述公告といいます。

この公告(呼びかけ)を見て、

ふざけんな!シャープ!

と文句のある(異議のある)債権者は、シャープに対して異議を申し立てることができます。

債権者が異議を申し立てた場合、シャープは債権者に対して個別に担保を提供したり、種々の対策を打って解決をします。

このように、資本金の減額については、株主総会で株主だけで決定できるものではなく、

異議のある債権者が存在する場合、かなり大変な手続きとなります。

 

シャープの減資の具体的なスケジュールですが、6月末の株主総会で決議後、債権者異議申述期間が終了すれば、シャープの資本金は晴れて(?)1億円になる予定です。

 

シャープくらいの大企業になれば、経営不振といえども、信用力はかなり有りますので、債権者保護手続きはすんなりと行くのかもしれませんね。事前に債権者とのすり合わせもしていると思いますし。

ただ、万一、大口の債権者がシャープに「No!」を突きつけた場合、問題はかなりややこしくなり、シャープに関する報道も加熱することと思われます。

 

シャープの資本金1億円への減資、まとめ

今回のシャープの資本金減額の目的や背景・今後の動向についてまとめると、

  • シャープが資本金を1億円に減資する理由のうち、もっとも大きなものは「マイナスとなる見込の利益剰余金を補填する」こと。
  • 資本金減額には、債権者の同意(異議がないこと)が必要。万一、債権者の同意が得られない場合、減資は難航する可能性も。
  • 順調に行けば、6月末にも、シャープの資本金は1億円となる。

というようになります。

それにしても、資本金1億円って、すごいインパクトありますよね。

シャープ、もう、なりふり構っていられないんだな・・・

みたいな。

台湾の大企業、ホンハイによる資本提携(買収?)話も出ていますが、

シャープには日本企業として、なんとか立ち直ってもらいたいものです。


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