東芝の不適切会計の内容とは?工事進行基準とは何?

社会政治経済

家電業界のなかでも好調だった東芝に、不適切会計をしていた疑いが浮上しています。

東芝の不適切会計は、2015年3月期だけではなく過年度にもその影響が及ぶ見込で、2015年3月期(2014年度)の業績予想も「未定」と変更しています。

このニュースは、Yahoo!ニュースからご覧いただけます。

投資家に与える悪いイメージは大きく、株価への影響も大きくなることが予想されます。

ニュース記事では、東芝の行った不適切会計について

  • 一部のインフラ工事で不適切な会計処理が見つかった
  • 社内調査の結果、他の工事・事業にも不正の可能性が広がった

としています。

東芝がインフラ事業に関して行った、不適切な会計処理とはどのようなものなのか?それが気になるところです。

そこで、この記事では、今回の東芝の不適切な会計処理の内容とは?について見ていきたいと思います。


スポンサード・リンク




東芝が行ったとされる不適切な会計処理の内容とは?

東芝が今回行った疑いのある不適切な会計処理は、インフラ事業で行われていました。

問題のインフラ事業は、前期2013年度(2014年3月期)のインフラ事業のようです。

何が問題だったのかといえば、そのインフラ事業の会計処理に適用される「工事進行基準」の取り扱いに問題があったようです。

具体的には、工事進行基準を適用する際に、見積総原価の見積もりが不当に小さくなっていたということみたいですね。

ゼネコンの経理の方や会計の専門家でないかぎり、「工事進行基準」については馴染みがないと思いますので、工事進行基準について、簡潔に見ていきたいと思います。

工事進行基準とはなんだ?

通常の商取引では、商品を顧客に提供した時点で売上を計上します。これを引渡基準といいます。

工事の場合も、昔はこの引渡基準に相当する「工事完成基準」で売上を計上していました。

工事を受注後、工事を進めて完成させ、顧客の検収を受けて「OK!」をもらった時点で売上を計上する、という方法です。

しかし、工事の場合、通常の商品販売と異なり、受注→引き渡しまでの期間が長くなるのが通常です。

大規模工事の場合、その工期が数年間に及ぶことが多いです。

この間、工事は進んでいるものの、工事完成基準では計上できる売上は0円となります。引き渡しが済んでいないので。

大規模工事を受注して、その注文がキャンセルされる可能性はほぼ無く、工事も実際に進んでいる。

それなのに、売上も原価も0円。

これって、取引の実態をきちんと反映している?

という指摘が昔からありました。

そこで登場したのが、工事進行基準です。

工事進行基準は、完成・引き渡しを待たずして工事の進捗状況に合わせて、売上と原価を計上する会計処理のことです。

工事進行基準では、次のような流れで売上と原価(費用)を計上していきます。

  • その工事の完成までにかかる全体のコスト(総原価)を見積もる(見積総原価)。
  • 当年度に実際に発生した原価を把握する。
  • 工事の進捗率は、発生原価/見積総原価で測定する。
  • 受注金額×進捗率(発生原価/見積総原価)=当期の売上

というものです。

例えば、受注金額10億円の工事で、総原価を5億円と見積もったとします。

そして、当期に実際に発生した原価が2億円だったとしましょう。

この時の工事進捗率は、

発生原価/見積総原価=2億円/5億円=40%

となりますから、工事進行基準によって計上出来る売上は

売上=受注金額×進捗率=10億円×40%=4億円

となります。その結果、この工事に関して計上する売上高と原価は

売上:4億円 原価:2億円

のようになります。

実際にはもう少し複雑ですが、工事進行基準に基づく売上と原価の計上方法は、こんなイメージです。


スポンサード・リンク




東芝の工事進行基準の適用は何が問題だった?

東芝が行った工事進行基準に関する不適切な処理が、具体的にどのような内容だったか?

その詳細は、現時点では詳細には判明していません。

ただ、上で説明した見積総原価の見積りに問題があったことは、現時点で発表されている東芝のIR情報やニュース記事を見ると分かっています。

具体的には、見積総原価を不当に小さく見積もっていたようです。

 

では、総原価を小さく見積もるとどうなるのでしょうか?

工事進捗率は、実際発生原価/見積総原価 で測定されます。

分母である見積総原価が小さくなれば、進捗率は大きくなりますよね。

その結果、受注金額×進捗率で計算される当期計上売上高も大きくなってしまいます。

ただ、工事の完成に至った場合には、見積総原価は実際総原価になりますから、最終的にはその工事に関する売上高と原価は適正なものになります。

つまり、今回東芝が行った不適切な会計処理は、

売上高・利益の水増し

ではなく、

売上高・利益の前倒し計上

と言うことが出来るかと思います。

 

このように、現時点のIR・報道の内容から判断するに、東芝の今回の不適切な会計処理の内容は、

工事進行基準で工事進捗率を高めることによって、売上高を前倒し計上していた

というものだと考えられます。

工事進行基準に関する内部統制に問題がある可能性も

今回の東芝の不適切な会計処理の影響は、全社的なものになる可能性が大きいです。

工事進行基準の適用にあたっては、総原価の見積りなど、適切に見積りを行う必要がありますが、

この見積もりの適切性を確保するための、チェック体制を構築しておくことが企業には求められています。

このチェック体制は、難しく言えば「内部統制」といいます。

工事進行基準に係る内部統制がしっかりとしていない限り、工事進行基準の適用は認められません。

今回問題になったのは、2014年3月期のインフラ事業が発端でしたが、同じような問題が他の工事にもあるとすれば、

東芝の工事進行基準に関する内部統制(チェック体制)に問題がある

と言えます。

そうなると、工事進行基準の見積りのチェック体制に問題があるわけですから、東芝がこれまでに工事進行基準を適用して計上した売上全てに、

正しくないのでは?

という疑いが生じてしまいます。

ですから、今回の問題はかなり大きくなるはずです。

さらに言えば、工事進行基準はインフラ事業だけでなく、ソフトウェア事業にも適用されるのが普通ですから、その影響はインフラ事業だけにとどまりません。

現行の会計基準では、不適切な会計処理が見つかった場合には、過年度に遡って修正・開示することが求められています(いわゆる過年度遡及修正)。

東芝の不適切な会計処理の内容と影響のまとめ

今回の東芝の不適切な会計処理について、最後にまとめてみます。

  • 工事進行基準の進捗率を実際よりも大きく見積り、売上を前倒し計上していた疑いがある。
  • 問題となったインフラ事業(工事)だけでなく、工事進行基準に関するチェック体制(内部統制)に問題があると思われる。
  • 内部統制に問題があるのであれば、他の工事・ソフトウェア事業全ての工事進行基準が「怪しく」なる。
  • それら全てをチェックして、修正する必要がある。
  • 過年度の決算も修正される可能性も。

というようになります。

今回の、工事進行基準の総原価の過小見積もりが、故意に行われていたものであれば「不正」となり、粉飾会計といえます。

一方、故意ではなく、ミスによって総原価が過小に見積もられていたのであれば、不正ではなく「誤謬(ごびゅう)」となり、粉飾会計とは言われません。

粉飾会計であったことが明らかになれば、東証からのペナルティは避けられませんし、株価への影響は甚大になることが予想されます。

 

経理・会計に携わった人間として同情するのは、

東芝の経理の方々、監査する会計士の方々がめっちゃ大変だろうな・・・

ということ。おそらく、徹夜続きだと思います。

個人的に、問題があまり大きくならないことを期待します。


スポンサード・リンク




この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で
  • 1
  • 5
  • 0

One comment