東電はなぜ黒字?業績推移を表とグラフにしてその原因を分析してみた

東京電力の従業員の給料が震災前の水準の10%減まで回復する、というニュースが地味に話題になっています。※ 2015年4月時点のお話です

東日本大震災と原発事故の影響で、震災後の東電の業績は2012年度(2013年3月決算)までずっと赤字でしたが、2013年度に黒字決算に転換しています。

そして、2013年度以降の3年間は3期連続で黒字続き。

このような東電の業績の黒字転換にあわせて従業員の給料も上げていく、ということみたいです。

普通の上場企業だったら、「業績が良かった」と聞いても「ふーん。」くらいにしか思わないのですが、東電に関してはちょっと違う感想を持つ方は多いのではないでしょうか。

なんで東電は黒字なの?しかも給料も上がるの?国からお金もらってるのに?それって何だかおかしくない??

というふうな率直な感想、素朴な疑問です。

そこでこの記事では、

  • 東京電力の過去8年間の業績推移
    ← 売上高・営業利益・経常利益・純利益など
  • 東電の人件費(従業員給与・役員報酬)の推移
  • リストラによるコスト削減金額
  • 原発事故の損害賠償損失額の影響

といったポイントについてまとめながら、東電が黒字決算になる理由を分析してみたいと思います。

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東京電力の過去8年間の業績推移

まずは、東京電力の有価証券報告書をもとに、最近の東電の業績を整理してみたいと思います。

2016年3月期までの東電の業績推移表

東京電力の各期の業績を、2016年3月期(2015年度)からさかのぼって過去8年間について表にまとめてみました。
見やすさのため、4年間ずつに分けて2つの表にしています。

出典と参考情報

表上の数値はすべて、東京電力ホールディングス株式会社の有価証券報告書を参照しています。

また、数値はすべて連結ベースのものです。

2009/3 2010/3 2011/3 2012/3
売上高 58,875 50,162 53,685 53,494
営業損益 669 2,844 3,996 △2,725
経常損益 △346 2,043 3,176 △4,004
純損益 △845 1,337 △12,473 △7,816
2013/3 2014/3 2015/3 2016/3
売上高 59,762 66,314 68,024 60,699
営業損益 △2,219 1,913 3,165 3,722
経常損益 △3,269 1,014 2,080 3,259
純損益 △6,852 4,386 4,515 1,407

2011年3月の大震災・福島第一原発事故の賠償の影響で、2011年3月期以降は3期連続で多額の最終赤字になっていることがわかります。

その額、3期通算で約2兆7千億円。

しかし、2014年3月期には約4,386億円の当期純利益(最終黒字)を確保し、以降3期連続で最終黒字となっています。

なお、2009年3月期に純損失を計上しているのは、新潟中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発の復旧費用のためです。

2016年3月期までの東電の業績推移グラフ

東京電力の過去8年間(2009年3月期~2016年3月期)の売上高・営業損益・純損益をグラフにしてみると、以下のようになります。
※ グラフ下の年表記は「年度」です。例)’08:2008年度(2009年3月決算)

こうやってグラフにして見ると、

  • 2011年3月の東日本大震災で巨額の純損失が発生している
  • 売上高は3.11震災以降、むしろ伸びている
  • 黒字転換した2013年度以降、営業利益は右肩上がり
  • 売上高と純利益は2015年度に減少に転じている

のような分析が出来ると思います。

東電の業績は震災前の水準まで順調に回復していることが分かりますよね。

ちなみに、2016年3月期に純利益が減少して1,400億円程度にとどまっているのは、約2,300億円の減損損失を特別損失として計上しているからです。

この減損損失は、一部の火力発電所・水力発電所で収益性の低下が見込まれるために計上されたものでして、2011年の震災とは直接的な関係はありません。

さて、このような東電の業績推移分析をふまえて、なぜ東電は黒字になったのか?なんで売上高が伸びたのか?という点について検討してみたいと思います。

東京電力が黒字に転換できたのはなぜ?

上でまとめましたとおり、東電は2014年3月期、2015年3月期、2016年3月期の3期連続で黒字決算となっています。

その理由は、

  1. 売上高の増加
  2. コストの削減

の2つの影響が大きいと考えられます。

続いて、この東電黒字化の2つの要因について詳しく見ていきます。

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東京電力の売上高が増加している2つの理由

東電の売上が伸びている原因について探るために、まずは2009年3月期~2016年3月期の8年間の売上高・販売電力量を表とグラフにしてみます。

東電の直近8年間の売上高・販売電力量の業績推移

出典

表・グラフは東京電力ホールディングス株式会社有価証券報告書の『第2 【事業の状況】』に記載の数値を参照して作成しています。

2009/3 2010/3 2011/3 2012/3
売上高 58,875 50,162 53,685 53,494
販売電力量 2,889 2,801 2,933 2,682
A / B 20.37 17.90 18.30 19.94
2013/3 2014/3 2015/3 2016/3
売上高 59,762 66,314 68,024 60,699
販売電力量 2,690 2,666 2,570 2,470
A / B 22.21 24.87 26.46 24.57

このように表にしてみると、

  • 売上高は震災後に増加傾向にあること
  • 販売電力量は右肩下がりで減少傾向にあること

が分かりますね。

また、3行目の「売上高 / 販売電力量」の数値を見れば、電気料金の単価を大ざっぱに把握できます。

震災以降を見ますと、電力料金の単価は上昇傾向にあることに気づきます(この点は後述します)。

上の表をグラフ化するとこんな感じになります。↓

2016年3月期まで過去8年間の東京電力業績(売上高・販売電力量)推移

グラフだと、売上高の増加と販売電力量の減少がパッと見でわかりますね。

さて、このような東電の売上高増加の理由としては、

  1. 2012年に行われた電気料金改定(値上げ)
  2. 火力発電燃料費の高騰

の2つの影響が大きいと考えられます。

それぞれの要因について順番に見ていきましょう。

販売電力量が減少している理由

東電の販売電力量が右肩下がりで減少しているのはなぜでしょうか?

この理由については、各期の決算説明会資料や有価証券報告書を確認すると

  • 2012年3月期
    東日本大震災以降、お客さまの節電へのご協力や、生産活動の落ち込みの影響がみられたこと
  • 2014年3月期
    春先の気温が前年に比べて高めに推移したことによる暖房需要の減少など
  • 2015年3月期
    夏期の気温が前年に比べて低めに推移し冷房需要が減少したことなど
  • 2016年3月期
    特定規模需要の減少に加え、冬期の気温が高めに推移し、暖房需要が減少したこと

のように記載してあります。

東電は、震災後の節電意識の高まりと気候の影響のせいで販売電力量が減ってしまったと考えているようです。

裏を返せば、節電意識が薄まったり気候の影響が無かったら販売電力量は回復していくという認識です。

ただ、省エネ技術の向上や2016年度からスタートした電力の小売自由化の影響を考えると、今後、東電の販売電力量が上昇していくことは考えにくいかな、と個人的には思います。

東電売上増加の原因① 電気料金改定による値上げ

東京電力の売上高が2013年3月期(2012年度)から上昇している理由の1つが、2012年に実施された電気料金の値上げです。

法人向けの電気料金は2012年4月から、家庭用の電気料金は2012年9月からそれぞれ値上げされました。

値上げ幅は家庭用電気料金が8.46%、法人向け(自由化部門)電気料金は契約によって異なりますが、百貨店や大規模事務所などのモデルケースでは18.1%もの上昇となっています。

参照

この電気料金改定によって、簡単に言えば「全ての顧客の料金を10%程度値上げした」わけですから、売上高が増加するのはある意味当たり前と言えます。

この電気料金改定(値上げ)の売上高へのインパクトは、東電の2013年3月期の有価証券報告書にも記載されています。↓

第2 【事業の状況】> 1【業績等の概要】(1)業績 > [電気事業]

収入面では、料金改定及び燃料費調整制度の影響により電気料収入単価が上昇したことなどから、売上高は前連結会計年度比13.3%増の5兆6,600億円となった。

東京電力株式会社 平成24年度有価証券報告書東京電力ホームページ

東電が電気料金を値上げした理由は?

2012年の電気料金値上げの理由について、東電は次のように述べています。↓

その中で電気の供給につきましては、福島第一・第二原子力発電所の停止に加え、柏崎刈羽原子力発電所の停止長期化などに対して、火力発電の焚き増しや長期間停止していた火力発電所の運転再開、新たな電源の緊急設置などに取り組み、供給力確保に努めてまいりました。

この結果、火力発電への依存度の高まりにともなう大幅な燃料費の増加が生じていることに加え、緊急設置電源の確保、福島第一原子力発電所の確実な安定状態の維持などにともなう費用増加が避けられない状況となっております。

…(中略)…

このように費用の増加に対して、徹底した経営合理化に取り組み、今後も最大限の取組みを進めてまいりますが、燃料費等のコスト増分を全て賄うことは極めて困難な見通しとなっております。

このため、お客さまには大変ご迷惑をおかけすることとなり誠に申し訳ございませんが、最低限の電気料金の値上げが避けられない状況にあります。

料金認可申請の概要について(PDF形式)東京電力株式会社による電気供給約款の変更認可申請資料について|資源エネルギー庁

東電の言い分がちょっと長ったらしいので簡単に言い換えると、こんな感じになるかと思います。↓

震災で原発全部止まっちゃったから、電力をちゃんと供給するために火力発電所をフル稼働させてます!

火力発電だと燃料をメチャクチャ使うから、燃料費が激増しちゃいました!

このまま赤字決算が続くとヤバイから、電気料金を値上げさせて下さい。お願いします!

震災前の東電の収益構造は、原子力発電を利用して「安く」電気を作ることを前提としたもので、電気料金の水準もこれをもとに決められていたはずです。

ところが、震災後に原発が全て止まったことで収益構造が変わり、これまでの電気料金水準では構造的な赤字が続いてしまう状態になってしまいました。

「この状態を変えるためには電気料金を改定して値上げするしかない」という主張で、東電は電気料金を値上げしたわけです。

赤字が何期も続いてしまうと企業の財政的な健全性が悪化して、電気の安定供給が難しくなってしまう、というのが東電の言い分です。

なんだか都合のいい話に思えてしまいますが、一応は論理的な筋は通っているのかもしれません。

このように、2013年3月期(2012年度)に売上高が急増しているのは、2012年中に実施された電気料金の値上げが理由でした。

ただ、これだけでは2013年度・2014年度にも東電の売上高が増加していることの説明がつきません。

ということで、東電の売上増加の2つ目の理由について見ていくことにします。

東電売上増加の原因② 燃料費の高騰(燃料費調整制度)

東電の売上高が震災後に伸びた2つめの理由は、燃料価格の高騰です。

火力発電の燃料には主に原油と液化天然ガス(LNG)が使われますが、この市場価格は2010年に上昇に転じ、2014年に暴落するまで歴史的な高水準で高止まりしていました。

原油価格とLNGの価格推移のグラフを見ると、その急騰っぷりが分かりやすいと思います。↓

【原油価格】

原油価格の推移グラフ

※ 出典:原油価格の推移(1980~2016年)-世界経済のネタ帳

【LNG価格】

液化天然ガス:LNGの価格推移グラフ"

※ 出典:天然ガス価格の推移(1980~2016年)-世界経済のネタ帳

なぜ燃料の市場価格が上がると東電の売上も上がるのかと言いますと、燃料価格の上昇に応じて電気料金を値上げしてもよいという制度:「燃料費調整制度」というものがあるからです。

原油やLNGの市場価格の変動が電気料金に反映される、ということですね。

燃料価格が上昇すれば電気料金は上がるし、下落すれば電気料金は下がるという感じで、燃料価格と電気料金がリンクしているイメージです。

上のグラフのように2010年度から2013年度にかけて燃料価格は急騰していますから、これにリンクして電気料金も値上げされた結果、東電の売上高も伸びているわけです。

そして、原油・LNGの価格が下落した2015年度にはそれに合わせて売上高も減少しています。

このように燃料価格が上昇すると売上高は増加しますが、燃料費のコストも増加するので損益の面ではそこまでインパクトはありません(収支トントンのイメージ)。

他の企業ですと、原料高・為替レートの変動による収支悪化のリスクは常にありますが、東京電力などの電力会社は燃料費調整制度によって収支が悪化しないように守られているのですね。
(逆に言うと、原料安・円高になってもコスト安の恩恵は受けられません。)

以上のように、震災後に東京電力の売上高が増加しているのは、2012年の電力料金値上げと燃料価格の高騰がその原因でした。

このうち、東電の黒字決算につながっているのは電気料金の値上げによる売上高増加です。

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東電はちゃんとコスト削減しているのか?

つぎに、コストの面から東電黒字化の原因を探っていきたいと思います。

東電の有価証券報告書や決算説明資料を見ますと、「徹底的な経営合理化によるコスト削減を実施している」とされています。

さて、本当に東電はコスト削減しているのでしょうか?

次にこの点を検討してみたいと思います。

東電の人件費(給与・役員報酬)の推移

「リストラと言えば人員削減」ということで、まずは東京電力の人件費の推移を2009年3月期から2016年3月期までの8年間のスパンで見てみましょう。

出典と参考情報

東京電力の有価証券報告書(各期)の【主要な経営指標等の推移】・【電気事業営業費用明細表】を参照して作成しています。

また、従業員数・給料手当・役員報酬総額は連結ベース、平均年収は単体ベースの数字です。

2009/3 2010/3 2011/3 2012/3
従業員数 52,506 52,452 52,970 52,046
給料手当 3,082 3,105 2,994 2,658
役員報酬総額 8.5 8.6 8.6 2.5
平均年収 759 757 761 653
2013/3 2014/3 2015/3 2016/3
従業員数 48,757 45,744 43,330 42,855
給料手当 2,471 2,442 2,603 2,583
役員報酬総額 2.2 2.3 3.2 4.3
平均年収 619 684 709 733

東日本大震災があった2011年3月期の数値と、東電が黒字決算に転換した2014年3月期の数値を比較してみると

  • 従業員数
    52,970人 → 45,744人(7,266人減少:△13.7%
  • 給料手当総額
    2,994億円 → 2,442億円(552億円減少:△18.4%
  • 役員報酬総額
    8.6億円 → 2.3億円(6.3億円減少:△73.2%
  • 平均年収
    761万円 → 684万円(77万円減少:△10.1%

のように、結構がんばって人件費を減らしていることが分かります。

金額的には560億円程度の削減ですから、東電が黒字化した理由の1つであることは確かなようです。

ただ、この記事の冒頭にも書きましたように、東電は従業員給与や役員報酬を震災前の水準に戻す方針です。

実際、2016年3月時点で従業員給料はほぼ震災前と同じ水準(96.8%)になっていますし、役員報酬も着々と増えています。

これっておかしくない?と違和感を持つのは私だけではないはずです。

東電の営業費用(人件費・燃料費以外)の推移

次に、経営合理化(リストラクチャリング)によって人件費以外の営業費用も削減されているのか?という点を検証してみたいと思います。

また、決算説明資料や有報を読むと「修繕工事の緊急的な繰り延べ」なんていうキーワードも出てくるので、修繕費についてもついでにチェックしてみます。

出典と参考情報

ここでは、営業費用のから人件費・燃料費・震災関連の費用を除いたものを「その他営業費用」と呼んでいます。

その他営業費用は、有価証券報告書の【電気事業営業費用明細表】の営業費用合計額から、

  1. 人件費(役員給与・給料手当・退職給与金・厚生費)
    ← 人件費については上で検討済みのため除外。
  2. 燃料費・地帯間購入電源費&送電費・他社購入電源費&送電費
    ← 販売電力量や燃料価格の変動の影響を受けるため除外
  3. 原子力損害賠償支援機構負担金・再生エネルギー特措法納付金
    ← 震災後に登場した費用なので震災前後で比較可能にするため除外

の項目を差し引くことで概算しています。

2009/3 2010/3 2011/3 2012/3
その他営業費用 21,633 21,260 21,271 18,844
修繕費 3,813 3,739 4,120 2,788
2013/3 2014/3 2015/3 2016/3
その他営業費用 18,890 17,915 19,689 20,769
修繕費 3,490 2,638 3,782 3,899

このように整理してみると、すでに震災翌年の2012年3月期には、前年度と比較して2,400億円以上も営業費用が圧縮されていることに気づきます。

2013年3月期・2014年3月期も低い水準で推移しています。

金額的に見て、この費用削減が2014年3月期の黒字決算の大きな理由であることは間違いなさそうです、

ただ、2015年3月期以降は増加傾向に転じており、2016年3月期にはほぼ震災前の水準に戻ってしまっています。

もしかしたら、黒字が続いたことによって費用圧縮の方針(締め付け)がゆるくなったのかもしれません。

あとは、修繕費が2012年3月期と2014年3月期に1,000億円以上も圧縮されていることにも要注目です。

2014年3月期の有価証券報告書には、修繕費について次のように記載されています。↓

第2【事業の状況】> 1【業績等の概要】
・・・一方、支出面では、原子力発電が全機停止するなか、為替レートの大幅な円安化の影響などにより燃料費が過去最高水準になったものの、修繕工事の緊急的な繰り延べなど全社を挙げて徹底的なコスト削減に努めたことなどから、経常費用は前連結会計年度比3.6%増の6兆5,934億円となった。

平成25年度(第90期)有価証券報告書東京電力株式会社ホームページ/span>

もちろん繰り延べ(延期)しても安全上問題のない修繕工事を延期したのでしょうが、何が何でも黒字決算を確保したいという東電の切実さを感じます。

以上、東電のコスト削減についての分析でした。

電気料金値上げしておいて、コスト削減してねぇじゃねーか!というツッコミを入れたかったのですが、人件費やその他の営業費用はかなり削減されていたようです。

福島第一原発損害賠償の損失の影響は?

ここまでの検証で、売上高の増加と営業費用の削減が東電の黒字につながっている、ということが分かりました。

ただ、当期純利益(最終黒字)を確保するためには、特別損益(特別利益・特別損失)を「まともな」金額にする必要があります。

巨額の特別損失を計上したりすると、営業利益(経常利益)が一瞬で吹き飛んで当期純損失(最終赤字)になってしまうからです。

この点、東電は原発事故関連で巨額の損害賠償を支払っていますので、かなり怪しそうです。

ということで最後に、2011年3月期以降の東電の特別損益のうち、金額の大きいものをまとめてみました。↓

2011/3 2012/3 2013/3
原子力損害賠償支援機構資金交付金 0 +24,262 +6,968
 災害特別損失 △10,204 △2,978 △402
 原子力損害賠償費 0 △25,249 △11,619
2014/3 2015/3 2016/3
原子力損害賠償支援機構資金交付金 +16,657 +8,685 +6,997
 災害特別損失 △267 0 0
 原子力損害賠償費 △13,956 △5,959 △6,786

原子力損害賠償支援機構資金交付金とは、国が主体となって設立した原子力損害賠償支援機構から東電が交付を受けた資金のことです。

簡単に言えば、自力では原発事故の損害賠償額を支払えない東電を助けるために、国が支援機構を通じて資金援助しているということです。

そして、この交付された資金は返済義務が無いと解釈されています。

つまり、交付金は法的には返す必要のないお金なので、債務(負債)として計上するのではなく特別利益として損益計算書に計上しているわけですね。

このように、特別損失に計上した巨額の原子力損害賠償費は、機構からの交付金の特別利益によって「穴埋め」されているため、東電の当期純利益は黒字になっている、と言ってよいと思います。

ちなみに

同じく特別損失として計上されている「災害特別損失」は、津波で被害を受けた福島第一原発に関連する損失です。

被害者の方に対する損害賠償と違って、建物などの損失を一時に計上しているため2014年3月期を最後に発生していません。

以上のように、原発事故に関連する損害賠償費用は実質的に国から補填されているため、損害賠償の支払が東電の損益に与えるインパクトはほぼ無いと考えて問題ないと思われます。

しかも、福島原発の廃炉費用についても機構から交付金を受けられるようになっているので、将来的にも損益への悪影響は小さいと言えます。

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まとめ:東電は黒字決算で当然だった

以上、「東電はなぜ黒字なの?」という素朴な疑問を解消するために、東電の業績推移を整理していろいろと分析してきました。

最後にポイントをまとめてみます。

  1. 東電の売上高が伸びたのは電気料金値上げと燃料価格高騰が原因
  2. 人員削減はかなり進んでいる(1万人程度)
  3. が、従業員給与・役員報酬の水準は震災前の水準に戻りつつある
  4. 2012年の電気料金値上げ以降は、営業損益は黒字になって当然
  5. 損害賠償による巨額損失は国からの交付金で穴埋めされている
  6. 東電は黒字決算で当たり前

2012年の電気料金価格改定によって、東電は火力発電に大きく依存した状況でも営業利益が出るような収益構造になっています。

さらに、特別損失に計上している巨額の「原子力損害賠償費」は、国から交付される「原子力損害賠償支援機構資金交付金」を特別利益に計上することで相殺されていますから、最終損益(純損益)への影響はそこまで大きくありません。

つまり、現時点で東京電力は「黒字決算で当たり前の企業」と言えるのだと思います。

もちろん、将来的に電気料金の値下げや交付金の早期「返済」などの圧力が強まった場合、このような黒字構造ではなくなる可能性もあります。

しかし、仮にこの状態が続くとすれば、しばらくの間は黒字決算が連続するのかもしれません。

そうなると、東電の株価は少しずつ上昇していくのでは?という予想ができます。

ちなみに、東電に損害賠償費用を援助している原子力損害賠償支援機構は、実は東電の全株式の54.69%を保有する筆頭株主だったりします(※ 2016年3月期有価証券報告書【大株主の状況】参照)。

株価が上がって一番喜ぶのは支援機構ですから、国は東電の業績悪化につながるような法改正とかはやりたくないはず。

そう考えると、長期的に見ても東電の業績は底堅く推移するのかもしれません。

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