東京電力の給料は高すぎ!?平均年収が震災前水準までほぼ回復

東日本大震災から時間が経つにつれて、震災直後にはアレだけ激しかった東電への批判はあまり聞かなくなってきました。

震災からの3年間、東電は巨額の赤字決算でしたし、従業員や役員の給料も大幅にカットされていましたから、もしかしたら「ちょっと可哀想だし、東電はもうイジメないであげよう」的な世間の雰囲気なのかもしれません。

ただ、東電の業績は2014年3月期からの直近3年間は黒字決算が続いていて、それに合わせて東電の従業員の給料や役員報酬も回復してきています。

「東電の給料が回復した」と聞いてしまうと、私のような一般庶民の感覚では、国からお金が投入されてるのに、給料上げるの?それに、そもそも年収高すぎない?と思ってしまうんですよね。

そして、このように思うのは私だけではないはず。

そこで、この記事では、

  • 震災後の東電の給料水準の推移
  • 東電の給料はなぜ「高すぎる」のか?

という点について書いてみたいと思います。

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東電の平均年収・役員報酬の推移がこちら

2009年3月期~2016年3月期の8年間について、東京電力の平均年収・役員報酬総額・従業員給与総額の推移を表にまとめてみました。↓

2009/3 2010/3 2011/3 2012/3
従業員数 52,506 52,452 52,970 52,046
給料手当 3,082 3,105 2,994 2,658
役員報酬総額 8.5 8.6 8.6 2.5
平均年収 759 757 761 653
2013/3 2014/3 2015/3 2016/3
従業員数 48,757 45,744 43,330 42,855
給料手当 2,471 2,442 2,603 2,583
役員報酬総額 2.2 2.3 3.2 4.3
平均年収 619 684 709 733

出典と参考情報

出典:東京電力 有価証券報告書(各期)の【主要な経営指標等の推移】・【電気事業営業費用明細表】を参照。

従業員数・給料手当・役員報酬総額は連結ベース、平均年収は単体ベースの数値。

震災直後の2012年3月期と2013年3月期に平均年収と役員報酬がガクッと下がっていますが、2014年3月期から思いっきり増加し、その後も徐々に回復しているのが分かると思います。

平均年収と役員報酬総額の推移をグラフにすると以下のようになります。↓

ご注意
グラフ上の「’08」などの表記は事業年度です。
例えば、’08は2008年度(2008年4月~2009年3月)=2009年3月期を意味しています。表示スペースの都合上、このような表記にしています。

グラフで見たほうが、給料カットの影響とその後急激に回復している様子が分かりやすいですね。

さて、2016年3月期の平均年収は2011年3月期の96.3%くらいまで回復していますから、東電の給料は震災前の水準までほぼ回復したと言って問題ないと思います。

東電の給料が上がったのはなぜ?

ここで、素朴な疑問が湧き上がります。

それは、なんで東電の社員の給料は上がったの?(オレの給料は上がらないのに)という疑問です。

これは、シンプルに言えば「業績が好調だから」です。

東電には組合員が32,000人もいる労働組合がありますが、この労組の交渉力はかなり強いはずです。管理職を除く全社員が加入しているそうですから。

この東電労組が「利益出てるんだから給料を元に戻せ!」と主張したとすれば、会社としては無視するわけにはいきません。

参照東京電力労働組合-Wikipedia

給料引き上げの具体的な経緯はともかくとして、その背景に東電の業績回復があることは間違いありません。

東電の過去8年間の売上高・営業損益・純損益の推移グラフ

そこで次に、東電の業績はどれくらい回復してきたのか、震災前後の業績推移をグラフで見てみることにします。

出典と参考情報

数値は各期の有価証券報告書上のデータを参照しています(単位:億円)。

また、「’08」などの表記は事業年度を意味しています(先ほどの平均年収のグラフと同様)。

このグラフを見ると、震災後にむしろ売上高は増加していて、2013年度(2014年3月期)から営業利益・純利益を確保して黒字決算が続いていることが分かります。

東電が営業利益・最終利益を確保できる理由

このような震災直後の巨額の赤字決算 → 売上増加 → 黒字決算に転換の一連の流れは、おおまかに次のように説明できます。

  1. 原発事故で全ての原子力発電所が使えなくなる
  2. 火力発電に大きく依存した状態になる
  3. 燃料消費量が大幅に増え、燃料費が激増する
    → 災害損失・損害賠償費用とともに巨額の赤字の原因となる
  4. リストラによるコスト削減を行う
  5. 2012年度に値上げ(電気料金の改定)を行う
    → 売上高増加の大きな理由の1つ
  6. 燃料使用量の増加による燃料コスト増は料金値上げでカバーできた
  7. 営業黒字に転換

ポイントは、東電が営業黒字を確保できるようになったのは、2012年に10%程度電気料金を値上げしたおかげというコトです。

さらに、東電が原発事故被害者に支払った巨額の損害賠償は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの交付金(資金援助)によって補填されています。

特別損失に計上した1兆円規模の損害賠償費は、同じく1兆円規模の「原子力損害賠償支援機構資金交付金」という名前の利益で相殺されている、という状態です。

なので、巨額の損害賠償費用が損益に与える影響はかなり小さく、これが東電が当期純利益(最終利益)を確保出来ている大きな要因になっているわけです。

さらに詳しい東電の業績分析をこちらの記事↓でやっていますので、よろしければご覧ください。

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東電の給料回復は「おかしい」と感じる理由

このような業績回復という背景もあって、東電社員の給料は上がった(回復した)わけですが、私たち第三者から見ると
いやいや、やっぱり給料上げるのはおかしいでしょー。と感じてしまいます。

こう思うのはなぜなのでしょうか?

給料が上がるのはおかしい、と感じる理由としては

  1. 2012年の料金値上げ
  2. 国からの資金援助

の2つの存在が大きいんだと私には思えます。

どういうことか?それぞれについてお話しいたします。

2012年の料金値上げの前提は徹底的なコストカットだったはず

2012年に東京電力は家庭用電気料金を8.46%、法人向け電気料金を10%以上値上げしました。

上でも触れましたが、この値上げについての東電の「言い分」をフランクに言えば「燃料コストの増大のせいで、リストラを精一杯やってもどう頑張ったって赤字決算が続くから、料金値上げさせてください」というものでした。

この値上げ理由については、東電が管轄省庁である経産省資源エネルギー庁あてに提出した『料金認可申請の概要について』という書面に書かれています。↓

…(前略)…この結果、火力発電への依存度の高まりにともなう大幅な燃料費の増加が生じていることに加え、緊急設置電源の確保、福島第一原子力発電所の確実な安定状態の維持などにともなう費用増加が避けられない状況となっております。

このため不動産・有価証券・関係会社の売却・清算などによる資金確保とともに、人件費や修繕・諸経費など徹底したコストダウンを進めております。

このように費用の増加に対して、徹底した経営合理化に取り組み、今後も最大限の取組みを進めてまいりますが、燃料費等のコスト増分を全て賄うことは極めて困難な見通しとなっております。

このため、お客さまには大変ご迷惑をおかけすることとなり誠に申し訳ございませんが、最低限の電気料金の値上げが避けられない状況にあります。

東京電力株式会社による電気供給約款の変更認可申請資料について資源エネルギー庁

ポイントは、上の引用で赤太字にした部分です。

東電は、コストダウンのための徹底的な経営合理化を「今後も最大限の取り組み」で進めていくと言っています。

言わば、継続的なコストダウンが料金値上げ改定の前提条件であるということです。

そして、常識的に考えれば、この継続的かつ最大限のコストダウンには人件費の抑制も含まれますよね。

このように考えていくと、東電が行った直近3年間の給料引き上げは、継続的なコストダウンという料金値上げの前提条件を崩す行為だといえます。

給料の引き上げによって料金値上げの前提条件(=徹底的なコストダウン)が守られなくなった以上、現行の電気料金は「高すぎ」の状態にあります。

くだけた感じで言えば、リストラ頑張るって約束で料金値上げさせてあげたのに、なんで勝手に給料上げてんの?嘘ついたの?ということです。

これが、東電の給料アップはおかしい!と感じる一つ目の理由です。

支援機構(国)からの交付金が無ければ一瞬で債務超過

東電には、原子力損害賠償・廃炉等支援機構という国が主体となって設立した法人から、7兆円に迫る巨額の資金が投入されています。

なぜ国が東電にお金を渡すかと言えば、東電が自力では原発事故の損害賠償費を用意できないからです。

ということは、国が援助しなければ東電は一瞬で債務超過、潰れる運命にあったわけです。

東電の給料アップに違和感を持つ理由がココにあるんだと思います。

本来であればとっくに債務超過であるはずの企業で、給料が上がる。それっておかしいでしょ、ということです。

世間一般の常識では、赤字続きの会社や債務超過の会社では従業員の給料は上がりませんからね。

余談ですが、財務諸表上、支援機構からの交付金は負債として計上されず、特別利益として損益計算書に計上されています。

これは、東電が受け取った交付金には返済義務がないと解されているからです。
(※ 毎年、支援機構が決めた金額を特別負担金として機構に支払うことで「返済」しています。「完済」までには30年近くかかると言われています。)

仮に交付金を返済義務のある債務として認識して負債計上してしまうと、東電は債務超過に陥ってしまいます。

東電が債務超過になるのは国としても非常に困るので、こういったスキームにしているのだと思われます。

ただ、東電が交付金を返さない、というのは国民の理解を得られるとは思えませんので、どれだけ時間をかけても返済していくはずです。

そう考えると、「やっぱり実質的に返済義務があるし、債務ですよねー。」となって、負債として計上するのが会計学的には正しいはずです。

こういう筋の通らない会計処理を見ると、会計学の論理は「大人の事情」には本当に弱いな、と思ってしまいます。

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まとめ

以上のように、東電の給料が上がる背景には、ここ数年間の黒字決算があるわけですが、

東電の給料アップは

  • 2012年の料金値上げの根拠が無くなる
  • 東電は、交付金が無ければ(又は負債計上すれば)債務超過の企業

という2つの理由で、筋が通らないモノだと思います。

毎期の決算で当期純利益が出たのであれば、

  1. その利益の分だけ電気料金を値下げする
  2. その利益を全額マルっと支援機構(国)に返す

のいずれかを行うべきです。

給料を上げるよりも電気料金下げるのが先でしょ。あと、貸したお金は早く返してね。ってことです。

原発事故から時間が経過したせいか、東電のネタがニュースや話題にのぼることが少なくなりましたが、発言力のある国会議員とかが問題提起して欲しいものです。

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